きっとまた会える
気付けばミユは、鉄筋がむき出しになった天井を見上げていた。
幾度か瞬きを繰り返すうちに、背中が痛むことに気付く。
半身を起せば、転がっていたのは体温が移ったコンクリートの欠片たち。埃の膜が張るタイルの上、大小様々な形を見つめている内に、ようやく自分がどこにいるのか理解する。
知らない間に意識を失っていたようだが、さっきまでエレベーターの前までいたはずだ。しかしミユが目覚めた場所は、初めて廃墟を訪れた場所と同じである。
まさか夢遊病の気でもあるのかとミユの眉は僅かに潜まった。
脳内にあるスクリーンに映し出される映像は、エレベーターの開閉ボタンに指を這わしたところから霧がかったように白く濁ってゆく。
不鮮明な世界に目を細めても、その先が進めない。何度も何度もボタンに触れる映像のみが再生されては、白く濁ってまた振りだしへ。強行突破を試みると、映像はぶつりと遮断され、再び蘇る気配を見せなかった。
疲労混じりの息を吐きだし、ミユは制服に譜癪した汚れを払う。
途切れた映像の先に答えらしきものがある気はするのに、その先へはもう進めないことが残念で仕方がない。
「確かあの時、急に睡魔に襲われて……」
僅かに残った確かな情報を小さく口にし、ミユの首が傾いた。
酷い眠気に襲われた記憶は残っている。――しかし、あの日、特に眠かったわけではない。緊張はしていたかもしれないが、そこまで身体が疲れていたようにも思えない。
ボタンに触れようとしたあの瞬間だけ、眠くて仕方がなかった。我慢ができないほどの強烈な睡眠欲が、一瞬で沸いて爆発するというようなことがあるのだろうか。
僅かな疑問にミユの唇が「なんで」と象る。そんな彼女の後ろに、人影が忍び寄っていた。