きっとまた会える
その声は特に大きなものではなかった。しかし、染み渡るように広がるそれは、まるで水面の上を走る波紋が見事に広がるように凛としたその声もまた、その場の空気を静かに響き、震わせた。
声の主を探し、目を張り巡らせていた彼女は“ナオキ”と呼ばれた短パン少年が飛び降りた物とはまた違う、キャラクターの乗り物に寄りかかっていた人影を捉える。
ゲームセンターのやけに明るいライトが照らしあげた横顔は思わず目を見開くほど整ったものだった。赤の少年といい、小さな暴君様といい、美形ばかりの空間に彼女は少なからず眩暈を感じた。
「でもよ、マモル兄!」
頬を膨らませたナオキはすぐさま抗議の声を上げるもマモル兄≠ニ呼ばれた少年が向ける有無を言わせぬ鋭い視線に慌てて言葉を飲み込んだ。萎縮したナオキを見やり、次いで彼女はマモルへと視線を向ける。
プルシアンブルーの髪色と、アイスブルーの瞳。切れ長の瞳が鋭い眼光を放つ様は冷たく、厳しい印象を彼女に植え付けた。
年齢は彼女と変わらないように見えるところから学生と思われるが、服装は少し変わったものだった。形だけみれば学ランのように見えなくもないが、上の服は腰下まであり、服の上からベルトが止められていて所々軍服を思わせる。青を基調とした制服は黒と青みかかった灰の三色で構成されていて、本人の髪色や瞳の色に合っていて似合っている。三つ編みにされた装飾がボタンとボタンの間を結び、弧を描いていた。何とも着脱が困難に思わせる服装をきっちり着こなすところといい、背後に“優等生”という三文字浮かんでいる錯覚まで見えてくる始末だ。マモルは赤の少年とはまるで正反対だった。
そんな彼に静かに見つめられ、彼女は射抜くような視線を真っ向に受け思わず息を飲む。
「まぁまぁ、マモル。ナオキも反省してるみたいだし、もういいじゃん」
心なしか温度が下がった場に似合わぬ明るい声色で割り込んできたのは赤髪の青年だった。
青年を一瞥するため、彼女はマモルの視線から解放される。その短い合間を酷く安堵する彼女は、緊張のため呼吸を忘れていたことに気付いた。慌てて、肺に酸素を送り込む。その慌ただしい動作が視界の端であまりにも懸命に動くせいか、マモルは再び視線の先を彼女に戻した。その一方で、宙で視線を合わせてしまった彼女は身を竦めたまま固まる。
まるで蛇に睨まれた蛙のような状態に苦笑を浮かべ、赤の青年は彼女とマモルの合間に身体を滑り込ませた。庇うように前に広がる背中に彼女の目は僅かに揺れる。
だが、にこやかに付け加えた「マモルは目細くてよく睨んでるって勘違いされるんだからもっと笑えばいいのに」という青年の言葉はどうやら逆効果だったようだ。彼女を助けるつもりで間に入ったなら結果オーライなのかもしれないが、マモルにとってそこは触られたくなかった部分なのか、更に鋭くさせた目は赤の青年を映していた。
開かれた口は短い息を吐き出して閉じられた。てっきり辛辣な言葉が飛び出るのかと身構えていた彼女は一文字に結ばれた口元を見て少し拍子抜ける。ここで変に反応すれば、自分が気にしているということを相手にバラすようなものだと判断したのか、数秒の沈黙の後に再び開かれた口から出たのは違う話題だった。
厳しい口調が告げた「……次はお前か。今度は何を拾ってきたんだ」を耳に入れ「拾ったって……」と目の前の青年の肩が少し下がる。
「そんな犬とか猫じゃないんだからさ。俺はただ女の子が一人で立ってたから連れて来ただけだよ。皆で一緒に遊んだ方がきっと楽しいって!」
横へ移動した青年の手を置いた肩が小さく跳ねる。触れられた。それも、極普通にである。
確かに赤い青年は社交的で、異性の友人も多いだろうがそれが全人類に当てはまるとは言えない。例えば肩に手を置かれ、緊張で汗ばみ始めた手を隠すような彼女のように、異性との触れ合いに慣れていない者だっているのだ。まるで全神経がそこに集まっていて、手が置かれた部分から熱が発生しているような感覚だった。
同意を求めるように「ね、キミもそう思うよね?」と白い歯が向けられても、会話が頭に入ってこなかった彼女は曖昧な台詞しか返せない。
助けを求めるように彷徨わせた視線が無意識的にマモルへと向いてしまう。彼女が困っていることに気付いたマモルは「またそんな適当なことを……」と深く息を吐いた。
間に挟まれた彼女の視線は二人の顔色を窺うように行ったり来たり。どうにも話が読めないが、自分は青年に拾われたらしい。先程の会話を思い出すと、どうやらこれが初めてというわけではないようだ。マモルの口ぶりからして前に引き続いて青年以外の人間が何かを拾ってきた様だが、あくまで憶測でしかない。結局、自分はどうなるのかと心音を早めながら彼女は耳を澄ませる。
二人は暫く会話を続けていたが、やがて元から口数が多くはないのか、それともこれ以上話しても無駄だと判断したのか。はたまたその両方なのか。マモルはその口を閉ざしてしまう。頑なに口を結んだマモルと対峙する赤の青年は、首を傾げたままだ。話は終わったのだろうか。
必然と流れる沈黙を前に彼女とこういう空気が苦手なのかナオキの両者が僅かながらに身体を揺らす。静まり返ってしまったこの空気をどうしたものか、と彼女が視線を宙に彷徨わせたその時、大声が上げられた。
「あーっ!」
「おねえさんがいる!」
可愛らしい二つの声が響く。
今まで聞いていた三人の誰のものでもない第三者の声に思わず彼女が肩を強張らせていると腰辺りに衝撃が二つ。足元をふらつかせながらもなんとか耐え、視線を下げると緑の瞳が四つ、彼女を見上げていた。何かを発そうと開かれた彼女の口は、そっくりな二人を前に開いたまま固まった。
キラキラと輝かせた大きな瞳は、まるで宝石のエメラルドを思わせる。思わず手を伸ばしたくなる程深みと艶ある緑色の髪は耳より上の、高い位置で一つにまとめられていて、その毛先は鎖骨付近で揺れていた。
二人の少女は身に纏う白いワンピースまでお揃いで、唯一の違いと言えば一つ結びの位置が右か左かということしか分からない。瓜二つの容姿から双子だろうというところまでは予想できるも、どちらが姉でどちらが妹まで見分けるのは酷く困難に思わせた。
ノースリーブのワンピースからは白い肌に細めの手足がスラリと伸びている。背丈と顔つきから見て歳は幼稚園児、又は小学生低学年程に見てとれたが、どちらともそうは思えない美貌の持ち主であった。子役をやっていると言われても違和感がないような、整った顔立ちだ。
それにしても本当にそっくりだ。向き合えば、まるで鏡を見ているような錯覚まで思わせる。
双眸を好奇に満たし、双子は揃って赤の青年へ向けた。息を吸うのも、瞬きも「カケルちゃんのかのじょさん?」と問いかけるタイミングも、上目使いで見上げる場面まで全く同じであることに彼女は静かに括目した。身近に双子がいなかったこともあるせいか、驚きと感動が大きい。
彼女たちはやはり双子で、これが双子の力というものなのかと感銘を覚える一方で、赤髪の青年の名が“カケル”ということを知る。
外見年齢にしてはませた幼い問いかけに対して瞬いていたカケルは、彼女と目が合うと苦笑を浮かべてみせ、首を左右に振った。数秒唇を尖らした次に双子の標的となったのは、腕を組み壁に寄りかかったまま目を閉じるマモルだった。
「マモルおにいちゃんのかのじょさん?」と再び重なる声に対して、彼が返したのは無言。
首を振るわけでもなく、そもそも目すら合わせない。マモルは目を閉じたまま無言を貫いた。
子供の言うことで彼が怒らなかったのは安心だが、それにしても少し冷たすぎるのではないだろうか。彼女が心配そうに双子を見やるも、少女たちは慣れているのか気にした様子もなく、それを否定と受け取ったようだ。心なしかつまらなさそうに肩を落とすと、最後に残ったナオキへと目を向け――瞬時に目をそらすなり、鼻で笑い飛ばした。
小さく声を漏らした少年に対して「ナオキはろんがいだよネー」と口を揃え、互いに顔を見合う。てっきり次は自分が問われる番だと嬉々として身構えていた少年、ナオキは声を揃える双子の言葉に追撃を食らい、更に悲痛の声を上げた。愛らしい顔立ちに反して意外と精神攻撃がお得意のようだ。それにしても難しい言葉をよく知っている。「なんだよそれ、どういう意味だよ!」と声を上げるナオキを宥めるよりも先に感心してしまう彼女のスカートが控えめに引っ張られた。
「ねぇーねぇー、おねーちゃん」
「けっきょくどっちが、おねえさんのかれしなの?」
まだ続くのか。首を捻られ、彼女の口から漏れたのは突然話を振られた驚きだった。
戸惑っている間も両サイドからスカートを引っ張る双子の姿はなんとも可愛らしく、思わず頬が緩みそうになったその時、ナオキの怒号が廃墟を揺らした。
「オレ様をむしすんじゃねぇ!」
しかし怒りに身体を震わせる小さな身体を視界にさえ入れないまま、彼女に声をかけ続ける双子。相手にされないことに憤慨するナオキ。これはなんという悪循環か。
いつもこんな感じなのか、どうすればいいのか。救いを求めた彼女の視線はカケルと宙でかちあう。彼ならばこの状況をなんとかしてくれるだろうと彼女の口から安堵の息が漏れるが、その考えは半分正解で、半ば不正解だった。
「あ――っ!!」
確かに、悪循環は打破された。しかし、それは彼女が思い描いていたものとは違った形で。
彼の大声で強制的に中断され、子供たちは大きな瞳をそれぞれ違う形にして発生源へと向ける。
「き、急に大声出すなよカケル兄ちゃん!」
「なになにー?」
「カケルちゃん、どうしたの?」
両耳を押さえ、恨めし気に目と口を尖らせたナオキも人のことを言えないぐらいには大声だったような気もするが、彼女は決してそれを音にはしない。
双子は興味津々にカケルを見やり、壁にもたれたままのマモルは無言だったが静かに眉間へ皺を寄せる。
そんな中で、この現状の原因であるカケルは未だ状況を飲み込めていない彼女の両手を奪うように取ると満面の笑みを浮かべた。
「自己紹介がまだだったよね。俺、カケル!」
「よろしくっ!」。そう向けられた笑顔は、太陽に向かって咲き誇る向日葵のようで。彼女は眩しそうに少し目を細める。触れられた手の温度が温かく、青年の体温が高いこともあるのだろうが自分の手が異常に冷えていたのだと彼女は悟った。心地よい温度へ、遠慮がちに握り返せば、腰に引っ付いたままの双子たちが巻きつける腕の力を強めて彼女を見上げた。
「わたしがおねえちゃんのノゾミで、」
「わたしがいもうとのミクだよー!」
自己紹介に合わせて右の方に髪を纏めた双子の方割れが、彼女の前で白いワンピースを翻しながら一回転させる。と、左の方に髪を纏めたもう一人が姉の隣で同じようにくるり、と一回転してみせた。
容姿も声も瓜二つの二人は子供らしい無邪気な笑顔を向けると「よろしくね」と彼女にもう一度抱きつく。今まで男しかいなかった空間に現れた同性の存在が嬉しいのか、人柄的に懐かれたのか。どちらにせよ子供好きな彼女にとって喜ばしいことである。同じように「よろしくね」とそれぞれの頭を撫でてやれば気持ちよさげに目が細まった。
「それでね」
双子の指先が、重なった声が腰に手を当て威張った姿勢を揃って指す。心なしか浮ついた動きと、タイミングを窺うように時折向けられる視線で自身の番が訪れるのを今か今かと待機しているのがよく分かる。
「あのこどもっぽいのがナオキだよ、おねえさん」
「こ、子どもっぽいってなんだよ!」
再び傷を負ったのかナオキの叫びが悲痛を訴えている。「オマエ等も子どもだろ!?」と続けられた言葉に彼女は同意を唱えたくなったが、外見的にはそう年齢は変わりなさそうに見えるが精神面では双子の方が遥かに大人に見えなくもない。しかし、ここでもナオキの声は双子の鼓膜を震わせることは叶わなかったように振る舞われ、彼女たちの紹介は続く。
「でねー、あそこでかべにもたれているのがマモルおにーちゃん。クールであたまがよくてカッコイイんだー!」
「オレ様をむしすんな」と渾身の叫びに空気が大きく震え、色んな意味で顔を真っ赤にさせた小さなスピーカーは腹の底から声を出したのか、肩で荒い息を繰り返す。
恐らく、こういうところが彼女たちに子供と言われるのではないだろうか。そして、大きな反応を返してくれる彼だからこそ、良い玩具のように遊ばれるような流れになってしまうのでは。
楽しげに双子が笑い合う。まさかここまで全てが思い描いた結果だというのだろうか。恐るべき双子の計算に最近の子供は凄いのだと慄いたと同時に、ナオキが今にも双子につっかかりそうなのを視界に入れ、彼女は慌てた様子で口を開いた。
タイミングは本人が思っていたものとは少し違ったが、どちらにしろ尋ねようとしていた事柄には変わりない。自分の質問に少しでもナオキの怒りが、双子の関心が反れてくれたなら――。
「えっと、ここは……?」
「ここはわたしたちのひみつきちなのー!」
重なった双子の明るい声色が返ってくることで、彼女の細やかな思いやりが報われたと思われた。しかし、横から異議ありの声を漏らし、引き金にナオキの声が空気を震わせる。
「だぁーかぁーらぁーっ! ひみつきちじゃなくてかくれ家≠セって何回も言ってるだろ!!」
「えー、ひみつきちのほうがカッコイイもんー」
「かくれ家は男のロマンなんだよ!」
確かに子供の頃、秘密基地や隠れ家に憧れ探し求めた時期が彼女自身にもあった。目の前で名称について言い合う双方にどちらもかっこいいと言ってやりたいが、余りにも激しい言い合いを前にその口元が次第に引きつってゆく。そもそもの目的は、彼らの喧嘩を止めることにあったはずだ。てっきり助け舟を出したつもりが新たな火種を巻いてしまったようで、裏目に出てしまった優しさに彼女は一人肩を落とす。
不穏な空気を通して困惑しきった彼女の心の声が今にも聞こえてきそうだ。一方的に言い負かされたナオキが言葉に詰まる姿を見る度に、彼女は自身のせいだと狼狽える。
胸の内が申し訳なさで満たされた頃、彼女は意を決して対立する二組の中心目指して足を大きく踏み出した。せめてもの詫びに、身を挺してナオキに降りかかる言葉の矢を塞ぐ壁ぐらいにはなってやりたい。
だが、覚悟に燃えた彼女の身体が間に割り込むよりも先に、ナオキと対立していたはずの双子がくるりと身体を捻り、方向を変える。眩しく感じる程の白い歯を向けられた彼女の足は失速を続け、やがて完全に勢いを失った。意図が読めず、茫然と立ち尽くす彼女に双子は愛くるしい笑顔を見せる。それはまるで、悪戯が成功した時に子供が見せる、無邪気なものであった。
「よーこそ、おねーちゃん!」
「わたしたちのひみつきちへ」
制裁用に宙に彷徨わせていた腕をだらりと重力に逆らうことなく下へ降ろした彼女へ次に向けられたのは言葉は歓迎の言葉だった。両手を広げた双子を前に、彼女は瞬く。
何がなんだか分からない。急な展開を前に、ただただ混乱し続ける頭だったがそれでも視界に映るナオキが鼻を鳴らすのを捉えた。
「まぁせっかく来たんだしな。かんげいぐらいはしてやるよっ」
ナオキの口調は決して柔らかいものではなかったが、悪意の欠片も感じさせなかった。何度も何度も両者の台詞を口内で転がし、噛み砕く。少し尖らせた口と逸らされた目。うっすらと染まる頬に気付き、ようやく自身に向けられた言葉の真意が理解した時、思わず笑みが咲き零れた。
「この中で俺が一番後にここを見つけたんだ。ほら、ここってあんまり人が来るようなところじゃないだろ?」
後ろから現れたカケルが「俺で最後だとずっと思ってたんだけど」と一度言葉を区切る。そうして双子同様両手を広げた。
「ようこそ、」
そう笑んだカケルに彼女の視界は無意識に潤み始めた。
彼女は人に嫌われることを恐れて息を殺すようにしていた今までをそっと思い返した。そこのどこにも、こんな人たちはいなかった。人生で、こんな風に歓迎されたことはあっただろうか。こんなに優しく迎え入れられたことはあっただろうか。
いつだって息ぴったりの動きを見せる双子は可愛らしく、小さな背を大きく反りながら発するナオキの言葉からは不器用ながらも温かみを感じ。あの短い会話の後から声を発するどころか、会った時から壁に寄り添ったまま微動だにしないマモルも、そんなに嫌な人物とは思えない。会ったことはないはずなのに、前にも会ったことがあるような錯覚に陥る。この喜びに混じる感情は懐かしさだろうか。
夏に咲き誇る、大輪の向日葵のような笑顔を向けてくれるカケル。彼の手も言葉も、笑顔もとても暖かくて。陽だまりの中にいるような気持ちにさせてくれる。
彼らといると、胸がじんわりと温かくなる。心が勝手に、彼らと出会えたことを喜んでいた。
――何故こんなにも胸が温かくなるのだろう。
何故、こんなにも――、
「よかったらキミの名前を教えてくれる?」
差し出された手に、向けられた輝かしい笑顔を優しく感じるのだろう。涙が溢れそうになるのだろう。
涙で歪んだ視界に初めて、自分が今まで巨大な不安に押しつぶされそうになっていたことに気付く。恐る恐る深呼吸をしてみた。いつから浅く浅く呼吸していたのだろう。こんなに息苦しい呼吸を、苦しく思わないほど不安だったのか。怖かったのか。
それを一瞬で解いてしまう彼の力は素直に凄いと思った。その力を分けてもらうように、力づけてもらうように彼女は自身も手を伸ばす。
「……ミ、ユ」
いつの間にか震える声を発していた。
何故か込み上げてくる涙と懸命に闘い、自分の中でいいと思える笑顔を浮かべる。
――この人たちと一緒にいたい。
彼女の思い。理由なんて分からない。でも、こんなにも熱い何かを感じさせてくれる彼らと共に過ごせば――自分の中で何かが変わる気がした。自分も嫌いな自分を、変えてやれる気がしたのだ。自分も好きになってやれる自分へ。
「私、ミユって言います」
触れた手は予想通り、温かく心地よいものだった。まるで持ち主の笑顔のような柔らかい温もり。
それはまるで勇気を出して、自身を変える最初の一歩を踏み出した彼女を労わるような、背中を押すような、そして優しく包み込む温かさだった。
これが決められたシナリオだと気付かず、彼らはそれぞれの運命を手繰り寄せ始めた――